遥か昔に描いた絵は 色あせてなくなった
曇りガラスの力作は 一晩で消えた
砂浜の自信作は 途端に波が洗い流した
机に残した落書きは 思い出の奥に追いやられた

失われたはずのその全てが
心の額縁に収まって
ひとつの美術館の体を成す
ひとつの歴史の体を成す

これが紛れもなく
"誰でもない誰か"の物語