1.
青。 四角に切り取られた、あまりにも鮮やかな青。
ここ3日は、雲さえ見えない秋晴れが続いている。
それでもこの空間の単調さに比べれば、昨日と全く同じ景色にも
幾分か新鮮味はあった。
3cmほどに見える飛行機が、視界の端から端までをフライトし終わるまで
それに目を凝らし、ジェット音に耳を傾けた。
瞬間の物音に意識を引き戻されて、昇平は前を向いた。
時計を見ると、長針はまださっきから30度も傾いていなかった。
目を横にやると、机に伏せ、あからさまに寝息を立てているものばかりだ。
―――――これが答えだ。 普段と変わりはない。
傲慢で、利己的で、そして"正常な"、僕たちの答え。
お互いにわかってるはずだ。だからこそ、こんな答えが生まれるのだろう――――
そこで、昇平の思考はストップした。
結局、出る結論は同じであったし、それを唱えたところで
この教室の"止まった時間"が動き出すこともないと知っていたから。
急に気だるさに襲われ、昇平は、はっと目を見開いた。
不思議なことに意識が止まると時間は動き出す。
程なくして、2時間目が終わるチャイムが鳴った。
このとき、昇平があと5分長く考えていれば、気付いたかもしれない。
いつも通りだと思っていた"答え"の中に一人だけ普段と全く違う表情の者がいたことに。
それがこれからの前兆だったことに。
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