4.

『コンコン』
乾いたノック音が生徒会室に響く。
「開いてますよ。」
先生に見られてはまずいと、真音<マオ>は机の上に広げていた紙を机の中に押し込んでから返事をした。
ドアが開くと、とりあえず教師ではなかったので、真音は声をかけた。
「・・・なんか用?」
"目の前の男子"は「・・・生徒会に入りたいんだけど。」と言った。
「ホント!!?」
思わず大声を出して喜んでしまった。

昇平は驚きっぱなしだった。
この部屋は、モノの量が半端じゃなく多いが、散らかってもいない。むしろ片付いている。
生徒会長になった端谷<ハシタニ>―――端谷 真音―――のことは知っていたが、
"こんなテンション"のヤツとは思ってもいなかった。
「・・・生徒会に入りたいんだけど。」
そう本題を伝えても、大声で叫ばれて、少々困ってしまっている。
「ホント!!?」と思いっきり聞かれた。
「ぁぁ・・・一応そのつもりだけど。」
口篭もるように昇平は返事をした。
「良かったー。ぜんっぜん人数足りないから困ってたの」
「・・・役員は2人って聞いたけど?」
部屋を見渡しても1人しかいないのに気付いて、思い出したようにそう訊ねた。
「うん、もう1人。2組の荻村<オギムラ>くん。」
「茂流!?」
――また驚いた。茂流―――荻村 茂流―――からは1度もそんな話は聞いてない。
「なーんだ、もう知ってるみたいだね。じゃぁ自己紹介はいらないっと。」
そう言うと真音は昇平の前の机にプリントを積み重ねた。
「・・・ちょっと待てよ! オレらの自己紹介まだだろ!」
「ぇ、もう知ってるもん。5組の山本くんでしょ?」
「・・・オレは5組でも山本でもないし、5組に山本なんていないぞ・・・。」
「・・・・・・・・自己紹介どうぞ。」
半分漫才のような会話のあとだが、オレと端谷は机に座って自己紹介した。
「――でオレは何をすれば良いわけ?」
「大体わかるでしょ?」
「・・・・わかんないから訊いてるんだ」
突然ノックの音が響いたので、2人は慌ててプリントを机に押し込んだ。
先生は顔を出し、2、3言 何か言って帰った。その後に、真音は言った。
「良くわかってんじゃない、仕事。」
昇平は、無言で返すしかなかった。


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