2.

「また爆破テロ・・・か。」
無造作に置かれた備え付けのテレビから垂れ流されるニュースに、昇平は嘆き呟いた。

今、世界は混乱し始めている。
血で血を洗うとまではいかないが、各地で起こっている争いは、
少なくとも利益になることではないと、当事者でない分よくわかる。
日本からも、世界各地に自衛隊が次々派遣されている。
そういう状況で、国内は何かが少しずつズレてきている。
それが顕著なのが組織や、集団である。
政府や地域、会社・・・・学校。
その"ズレ"は、この麻坂高校<アサカコウコウ>も例外ではない。
この休み時間に平然とテレビがついているのも、その影響なのかもしれない。

「・・・時代が時代だからね。」
横からいつも通りの大人びたセリフ・大人びた声が聞こえた。
茂流<シゲル>。中学からの仲だ。
オレはコイツ以上に"良いヤツ"に会ったことはないし、これから出会うこともないと思う。
茂流は、自分のことを表に出さず周りに第一に気を配る。だから、とりあえず突っ走るオレと合うのだろう。
同時に、茂流は人を戒めるのも上手い。
実際、その「突っ走る性格」というのも茂流に言われて気付いた。
そう考えると、今の言葉も、あちこちで起こる争い事をまるでヒトゴトのように言ったオレを
注意したのかもしれない。
「昇平?」
「ぁ、あぁ、悪ぃ。」
たった一言で考え込んでしまったので、茂流は昇平の顔を覗き込んで言った。

しばらくして、2人の会話を遮るように蛍光灯が消され、部屋が少し薄暗くなった。
3時間目は移動らしい。
「じゃぁ、おれは戻るよ。」
そういって、茂流は自分の2組に戻った。
昇平は7組のカギを閉め、次の教室へと走った。
廊下には、2人の足音だけが響いた。



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