5.

「やっぱり来たんだ。」
"突然オレが生徒会にいて、茂流驚くだろうな"
そう思っていた昇平であった。が、職員室に届け物をして返ってきた茂流の反応は
期待外れで予想外なものだった。
「・・・やっぱり、って、気づいていたのか?」
昇平が訊くと、茂流がドアを閉めながら答えた。
「うん、なんとなく。」
「・・・おまえ予言者かよ・・・。」
そんなやりとりの後、"生徒会役員の3人"は今度やる生徒のみの活動の話をした。
そのために作っていたプリントだったから見られたらマズいんだ、と昇平はわかった。
あの頭のカタい連中なら、こんな企画は瞬殺だろう。

ずっと話をしていると、外はもう薄暗くなった。学校でこんなに速く時間が経つのは初めてだった。
何故だか緊張してとめてしまった2つ目のボタンに手をかけながら、耳をすませていた。
どこかで火事なのだろうか、鳴り響くサイレンの音と、それに反応した犬の遠吠えが
不思議にミキシングされて、奥底のほうから寂しさを引きずり出してくる感覚。
その感覚から一滴一滴搾り出されてくる"冬の訪れ"という雫が、
昇平の心で弾けて、力強く落ちる。
窓から見える景色は、真っ暗でありながらも月明かりでぼんやり照らされている。
―――――ゆったりと、居心地の良い時間が過ぎる。
同じ建物の中とは到底思えなかった。

そこには"ナチュラル"に限りなく近づいていく今の昇平がいた。
そして彼には、普段は分厚いフィルターを通してでしか見えていなかった2つの感情が、
はっきりと見え始めていた。
その変化に気づくとほぼ同時に
――――――見えた、それは、"反抗心"と"独立心"だった。―――――


「・・・今度の生徒のみの活動のコトなんだけどさぁ。」
真音と茂流は、10分ぶりに発言した昇平を見た。
「――――――ひとつ考えがあるんだ。」



第1章・完

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