1.

赤。むせかえるような赤。
3クラス120人が同じ赤の服を着て体育をやるわけだから、当然"目に来る"。
もっと緑とか目に優しい色にして欲しい。
気を取られていると、昇平の顔めがけてサッカーボールが飛んできて命中した。
周りが盛り上がって、つい昇平も微笑んでしまった。
しかし、ここで昇平は"違和感"に気付いた。 何か得体の知れない・・・。
気になって、周りを見わたそうとしたが、溢れかえる赤に阻まれた。

賑わいの合間に不意に静寂が挟まって、みんな黙ってしまった。
体育の後の昼休みであることも加わって、誰も再び話し出そうとはしない。
―――――――また"違和感"が。
昇平は、今とばかりに後ろを振り返った。
目が合った、アイツは、上山<カミヤマ>だ。
変わった様子はなく、いつも通りに椅子に座っている。
こっちに気づいて、小さく微笑む。昇平はそれに返して笑った。
そのときは、それだけだった。  そのときは。


空を見上げる。
月を隠そうと動く雲。 雲に隠れようと留まる月。
見えなくなった月の代わりに、街灯が帰り道を照らす。
止まることを許さない、強さのある光に導かれて、 昇平はためらっていた一歩を踏み出した。
それと同時に、月が雲から逃げ出してきた。
限りなく白く清浄な光に、重々しい昇平の心は簡単にあぶり出された。
その感覚に浸らせる前に、月は雲の中に帰っていった。

昇平は、その後の帰り道もずっと悩みながら帰った。
内容は、当然のように、"次の生徒集会"のことだった。
ふと、今日の昼に友達の電子辞書を借りて調べた単語を思い出した。

"反乱する ・・・・・・・ revolt"


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