2.

昇平はクラスで皆と笑っていた。
他愛もない話で皆を笑わせていた。
しかし、本心は全く笑っていない。
カバンに入っている書類のせいだった。
――――それが1時間前の話。
今、昇平は思いつめた表情で生徒会室のドアをノックした。

「・・・できたぞ。」
そう言って、1枚の紙を机に置く。
上に大きく、「クーデター」の文字。
それは、皆が持っていた"答え"がようやく形になったものだった。
「じゃぁ、細かい部分も作ろ。」
対照的に、真音が明るく言った。
座ろうと昇平が椅子を引くと、壁際に詰まれたプリントが倒れてしまった。
それを一緒に拾いながら、茂流は二人に話をした。
茂流の調べたところによると、12月の16日に、全教員出張があるらしい。
「その日に放送で流せばいいと思うよ。」
「・・・つーか、おまえスゴいな・・・。」
その情報入手力に昇平が感心すると、茂流は微笑んだ。
その笑顔さえ、既に恐ろしく感じられた。

それから3人は、また暗くなるまで話をした。
話しているうちに、昇平は自分がさっきまで思いつめていたのがバカバカしくなった。
そう。何も戦争をやろうって言うんじゃない。
ただ俺達は、自分のスタンスを確認したいだけだ。
少しだけ不器用、少しだけハズれた、俺らだけの手段で。
そう考えていると、昇平は何日かぶりに素直な笑顔になった。
「・・・ニヤニヤしてないで、ココに名前書いてよ。」
「・・・・・。」
一回わざとらしく真音をにらんで、昇平は紙に名前を書いた。
字はニガテなので、案の定2人に笑われた。
その瞬間で、昇平の不安は完全に吹き飛んだ。
―――クラスで感じたあの違和感も、忘れていた。 忘れてしまっていた。


その全ての会話と計画を、ドアの外で聞いていた者がいた。
怪しげに微笑むと、彼はその場を去った。
上靴の文字は―――――「上山」。



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