7.
まったくの別人だった。
その、書いてある「上山」という名前をもつ"先日までの彼"とは。
顔こそ同じであれ、それが放つ、なんというかオーラは
重苦しく部屋に入ってくる気がした。
彼の向こう側に見える窓の外は、初雪が降り続いている。
もしこの雪が演出ならば、賞賛に値する。そんなタイミングだ。
目が、合わせられない。

昇平が完全に固まっていた間に、既に話は済んで上山は中にいた。
「7組の上山仁<ジン>くん・・・昇平と一緒だね。」茂流が話す。
「おう。で、何かやることはないのか?」仁が言った。
「あ、やる気あるんだね~。」真音がいつもの調子で話す。
ふたりが知らなさすぎるのか?それとも、俺が考えすぎなのか?
いずれにしても、今俺の横に座っているは、俺が知っている上山仁ではない。
・・・俺が、知らなさすぎるのか?

結局黙っていてもどうしようもないので、昇平は口を開くことにした。
「なんで、ココに?」昇平は仁に尋ねた。
「・・・おもしろそうじゃねぇか。」少し笑ってそう答えた。
昇平は、意外と仁が自分を同じようなことを考えていたことに驚いた。
そのせいで、今まで抱いていた違和感までにも疑いを持ってしまった。
――――変わったのは、正しいのは・・・・どっち?
これじゃ、まるで、俺が―――――
顔が引きつるのを感じた。

帰り際。
もう外は真っ暗だが不思議と明るみを感じるのは、未だやまない雪のせいである。
上から下、黒から白へのグラデーション。しみてくる寒さ。
仁が昇平に近寄った。そして、誰にも聞こえないようにこう囁いた。
「不安でも何でも、時間が全て――――」
よく聞き取れなかったが、昇平にはわかった。2つ目の寒気を感じた。
ほとんど同じものを見比べるほど、違うところが浮き彫りになるような感覚だった。
はっと気づけばかなり前のほうに行ってしまった3人に、昇平は駆け寄る。
ふいに意識が変わり、もうすぐ終業式であることを思い出した。
"この4人で・・・。"
いよいよ始まっていく。
そう思って見回すと、3人とも寒さに首をすくめていた。
雪はまだやみそうもない。



第2章・完

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